富士ゼロックススーパーカップで幕を開けた2020シーズンのJリーグ。
リーグ王者の横浜Fマリノスと、天皇杯チャンピオンのヴィッセル神戸の対決は、9人が連続で失敗するという歴史的なPK戦の末にヴィッセル神戸が勝利を収めましたが、両チーム合計で11名もの外国籍選手を起用していたのをご存じでしょうか。(マリノス6名、ヴィッセル5名)
この2チームはリーグの中でも外国人枠を最大活用している2チームといえ、昨シーズンの2チームの好成績は外国籍選手の活躍によるところが大きいと言えます。
少し前までは最大3名であったJリーグの外国籍枠ですが、世界的な名手であるアンドレス・イニエスタ、ルーカス・ポドルスキを獲得したヴィッセル神戸の補強戦略をきっかけとして2019年に外国籍枠の拡大が図られました。
転機となった2019年のルール変更
外国籍枠登録数の転機となったのが、2019年のルール変更でした。
2019年以前のルール
1チームにつき最大5名の外国籍選手の登録が認められ、そのうち最大3名が試合にエントリー可能でした。
つまり5名の外国籍選手をチームが保有していたとしても、実際に試合に起用できるのは最大3名までだったのです。(2名は必ずベンチ外となる。)
上記ルールの例外としてAFC(アジアサッカー連盟)加盟国の国籍を有する選手は1名のみこの制限の対象外でした。
例)ブラジル人プレーヤーが5名、韓国人プレーヤーが1名チームに登録されていた場合
ブラジル人プレーヤーは最大3名まで起用可能。韓国人プレーヤーはアジア枠としてカウント外となるため、合計4名まで同時出場が可能。
2019年以降のルール
2019シーズンからは外国籍選手の登録は無制限となり、さらに最大5名まで試合にエントリーできるようになりました。なお、この変更に伴い例外枠であったアジア枠が撤廃されています。
例)ブラジル人プレーヤーが5名、韓国人プレーヤーが1名登録されていた場合
試合出場可能なのはブラジル人プレーヤー、韓国人プレーヤー併せて5名までとなる。
<登録枠ルール対比表>
最大登録選手数 | 最大試合エントリー数 | アジア枠 | |
2019シーズン | 無制限 | 5名 | – |
2018シーズン | 5名 | 3名 | 1名 |
マリノスは外国人を6名スタメン起用!?
マリノスが優勝を決めた2019シーズン最終戦(FC東京戦)では、マリノスはスタメンに6名もの外国籍選手を同時起用していました。
GK パク・イルギュ(韓国)
DF チアゴ・マルティンス(ブラジル)
DF ティーラトン(タイ)
MF マルコス・ジュニオール(ブラジル)
FW マテウス(ブラジル)
FW エリキ(ブラジル)
最大5名までの外国人枠にも関わらず、なぜマリノスが6名同時起用できたかというと、そこにはJリーグ提携国枠の存在があります。
Jリーグ提携国枠とはタイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタールの国籍を有する選手に関しては日本人選手と同等の扱いとなり、外国人枠の対象から除外される制度となります。
マリノスのスタメンではティーラトンがタイ国籍のため、通常の外国人枠から外れ、6名の外国籍の同時起用が可能となったのです。
Jリーグに押し寄せるタイ代表
提携国枠でJリーグのクラブに人気があるのはタイ人プレーヤーです。
そのきっかけとなったのはコンサドーレ札幌のエースとして活躍するチャナティップと、横浜Fマリノスで不動の左サイドバックとなっているティーラトンの存在でしょう。
チャナティップは2018シーズンにタイ人として初めてベストイレブンに輝き、ティーラトンは2019シーズンにタイ人プレーヤーとして初めてリーグ優勝を果たしました。
タイはサッカー人気が非常に高いことで知られ、チャナティップ、ティーラトンは共に自国で国民的な英雄として扱われています。このことはグッズ収入やクラブ知名度の面でも大きな恩恵を所属クラブにもたらしています。
過去2シーズンで2人が実力を証明したことから、今や実力、ビジネスの両面でタイ人プレーヤーがクラブへもたらす恩恵は大きいことが知られており、今シーズンは各クラブが積極的にタイ代表プレーヤーを獲得しています。
また西野前日本代表監督がタイ代表監督に就任していることもJリーグ所属のタイ人選手が増えている要因の1つといえます。
<2020シーズンのタイ代表プレーヤー>
チャナティップ(コンサドーレ札幌)
ティーラトン(横浜Fマリノス)
ティーラシン(清水エスパルス)
カウィン(コンサドーレ札幌)
まとめ
世界最高峰といわれるプレミアリーグは外国人枠がなく、アーセナルはスタメンにイングランド人が一人もいないという時期もありました。
しかし外国人枠を緩和しすぎると、自国選手が育たないため、代表チームの弱体化に繋がる懸念もあります。
レベルの高い外国人選手の存在は、リーグを魅力的にするという面もあるため、うまくバランスを取りながら外国人選手たちを活用できるリーグになっていってほしいですね。
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