Jリーグ2019シーズン第12節の浦和レッズvs湘南ベルマーレの試合で起きた大誤審の余波で、Jリーグにゴールラインテクノロジーの導入を求める声が大きくなっています。
完全にゴールラインを割ってサイドネットを揺らしているにもかかわらず、ゴールが認められなかった大誤審です。浦和のGK西川も試合後にゴールだったことを認めています。
ゴールラインテクノロジーは簡単に言うと、ボールがゴールラインを割ったかどうかを機械的に判断する仕組みです。
近年はサッカーのプレースピードが早く、審判の肉眼ではゴールラインを越えたかどうかを正しく判定することが難しくなっており、このようなシステムの導入が望まれています。
しかし導入にはかなりの金額が掛かると言われており、Jリーグも二の足を踏んでる状況です。
また誤審もサッカーのうちであると考え、システム導入に否定的な意見もあり、一筋縄ではいかない状況です。
今回は、そもそもゴールラインテクノロジーとは何かというところも含め、まとめてみます。
ゴールラインテクノロジーが初めて採用された国際大会は?
ゴールラインテクノロジーが国際大会で初めて採用されたのは、2014年のブラジルワールドカップが最初でした。
2014年の導入のきっかけになったと言われるのが、前大会の2010年に起きた誤審です。
この大会の決勝トーナメントでイングランドとドイツが対戦しましたが、イングランドのランク・ランパードが放ったシュートがノーゴールと判定されてしまい、チームが敗退することとなりました。
ランパードのシュートは実際にはバーに当たってゴールライン内に落ちていることから、ゴールとして認められるべきものでした。
実際の映像をみると、確かに肉眼だと直ぐにゴールかどうかを判断するのは難しかったかも知れませんが、テレビ中継では繰り返しゴールラインを越えている映像が放映されており、国の威信をかけたワールドカップという舞台であったことからも、大会後もこの誤審は繰り返し議論されました。
この議論に終止符を打つために、FIFAは2014年のゴールラインテクノロジーの導入に踏み切ったと言われます。
ゴールラインテクノロジーを導入しているリーグは?
実はゴールラインテクノロジーを導入しているリーグは世界でも少なく、2019年時点では
- プレミアリーグ(イングランド)
- リーグ・アン(フランス)
- ブンデスリーガ(ドイツ)
- セリエA(イタリア)
の4リーグのみです。
意外なことにリーガエスパニョーラ(スペイン)や、メジャーサッカー(アメリカ)でも導入されていません。
Jリーグも冒頭に述べた通り、費用面の問題をクリアできず、導入に至っていません。
ゴールラインテクノロジーの仕組みとは?
ゴールラインテクノロジーにはいくつかのシステムが存在しますが、現在は「ホークアイシステム」が主流です。ただし基本的な考え方はどのシステムでも同じです。
ゴールラインテクノロジーはボールがゴールラインを超えているかどうかを判断するために、複数のハイスピードカメラでゴールを映しており、コンピュータがその映像を多角的に分析して、ラインを越えているかを判断を瞬時に下します。
ボールがゴールラインを越えると、審判が身に着けている時計が振動し、ゴールという表示が出ます。これを見て、審判はゴールという判定を下すことができます。
2014年のワールドカップでの初導入時に、FIFAが定める国際ルールも改定されており、ゴールラインテクノロジーの判断で審判がゴール判定を下して良いことになっています。
「ホークアイ」はテニスの試合で使用している?
実は「ホークアイ」はテニスの試合での使用実績の方が有名です。
テニス中継を見ているとラインに入ったかどうかを画像判定しているシーンも目にしますが、実はこれは「ホークアイ」で判定しています。
テニスのボールは時速200キロを超えており、サッカー以上に肉眼でのライン判定が困難ということがあり、早くから本格導入されています。
基本的にはこれと同じ仕組みで、サッカーでもゴール判定をしています。
なお「ホークアイ」は元々イギリスの会社の製品ですが、2011年に日本企業のソニーが会社を買収しています。
以前はボールにチップを埋め込もうとしていた?
もともと以前からゴールラインを越えたかどうかを分析するシステムは開発が繰り返されており、その都度コストと技術の問題から頓挫していました。
ホークアイ以前に最も主流だったのはボールの中にチップを埋め込み、ゴールラインを越えたかどうかを判定するものでしたが、結局実用化されることはありませんでした。
ゴールラインテクノロジーの導入金額
「ホークアイ」を導入するためには、1会場で20万ドルが必要と言われます。日本円にして約2,100万円であり、これを全ての会場に導入するとかなりのコストが掛かります。
クラブが負担するのか、リーグが負担するのかという問題もあり、日本では採用されていません。
ゴールラインテクノロジーの費用対効果
ゴールラインテクノロジーは導入に多額のコストが掛かるうえに、ゴールライン上の微妙な判定は毎試合起こるわけではないため、費用対効果が低いと言われます。
またゴールラインテクノロジーのあと、2018年ワールドカップからはVAR(ビデオアシスタントレフェリー)の導入がFIFAから認められており、これによって微妙なゴール判定もカバーできるのではないかと言われています。
Jリーグではゴールラインテクノロジーよりも、VARの方が汎用性が高いため、費用対効果の面からもJリーグはVARの導入を急いでいる背景があります。
まとめ
誤審もサッカーの一部だと考え、システムの導入に否定的な意見もあります。
ただし、テレビ中継されるようなサッカーの試合だと、以前に比べ様々な角度からの映像が多くなっているため、どうしてもその場にいる審判よりも視聴者のほうが正しく判断できてしまうことがあります。
その場合、1人の人間としての審判に必要以上の批判が出てしまうため、審判を守るためにもシステムの導入は必要になると考えています。
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