2019年4月25日、J1松本山雅FCがJリーグの規定するホームグロウン制度の基準を満たせなかったため、2020年シーズンのA契約選手枠を25人から1人減らされることが発表されました。
このニュースを聞いて、何の話なのか分からなったサポーターも多いと思います。
それもそのはずで、このホームグロウン制度が導入されたのは2019シーズンからです。
つまり、松本山雅が制度導入後の初めての罰則対象になったということになります。
ホームグロウン制度とは?
まずホームグロウンは英語で「homegrown」と表記し、簡単にいうと「地域や国(ホーム)で育成された(グロウン)」という意味になります。
Jリーグはホームグロウンに該当する選手を以下のように定義しています。
12歳の誕生日を迎える年度から、21歳の誕生日を迎える年度までの期間において、特定のJクラブの第1種、第2種、第3種又は第4種チームに登録された合計日数が990日以上の選手
なお登録期間は通算でよく、特別指定選手はこの枠にはカウントしません。
さらにレンタル移籍期間は、保有元のクラブの在籍年数としてカウントします。
2019年シーズンは、3月29日の選手登録期間終了時点で、各J1クラブに2名以上のホームグロウン選手を有していることをルールとしていました。
※ちなみに、この人数は段階的に引き上げられる予定であり、J1では2021年には3人以上、2022年には4人以上の選手を保有することを義務付けています。J2、J3は保有数を別で定義しています。
ホームグロウン制度の目的とは?
Jリーグはホームグロウン制度の目的として、各Jクラブが選手育成にコミットし、アカデミーの現場を変えるためとしています。
各Jクラブはホームグロウン制度の導入によって、トップチームの選手登録枠を確保するために自クラブで質の高い選手を育成していく必要があります。
質の高い選手を育成するためには、アカデミーに力を入れる必要があり、今後アカデミー出身のプロ選手が増えていくことが期待されています。
部活出身の選手は?
プロになって活躍した選手の中には、高校の部活出身の選手や、地方クラブ出身の選手もいます。
しかし高校の部活出身であっても高卒後にプロになっていれば、ホームグロウンに該当します。(内田篤人など)
この枠に該当しなくなるのは、育成年代が部活出身かつ、大学サッカーからプロになるパターンです。
例えば長友佑都は東福岡高校の部活から明治大学へ進学した後プロ入りしたため、FC東京のホームグロウンには含まれないことになります。
今後は子どもたちにとっても、どのクラブでプロになりたいかということを考えた上でチームを選択する必要があり、それに見合った実力を付ける必要があります。
今でもJリーグクラブの下部組織に入るのは狭き門ですが、その競争が一層激しいものになると考えられます。
各クラブのホームグロウン選手の人数と主な選手一覧
冒頭の松本山雅は今シーズン、ホームグロウンとしてカウントできる選手が1人しかおらず、規定を満たすことができなかったため、2020年シーズンの登録人数を減らされることとなりました。
ちなみに松本山雅で唯一、この規定を満たしていたのは先日日本代表に選出された前田大然選手です。
松本山雅以外の状況は?
松本山雅以外J1チームのホームグロウン選手の登録状況ですが、以下のようになっています。
※( )は主なホームグロウン選手
13名
清水エスパルス(北川航也、立田悠悟)
ジュビロ磐田(大井健太郎、山田大記)
ガンバ大阪(東口順昭、倉田秋)
セレッソ大阪(柿谷曜一朗、丸橋祐介)
サンフレッチェ広島(大迫敬介、青山敏弘)
12名
鹿島アントラーズ(内田篤人、土居聖真)
FC東京(久保建英、橋本拳人)
10名
横浜F・マリノス(天野純、喜田拓也)
北海道コンサドーレ札幌(進藤亮佑、菅大輝)
9名
ヴィッセル神戸(藤谷壮、小川慶治朗)
8名
浦和レッズ(宇賀神友弥、山田直輝)
7名
大分トリニータ(岩田智輝、小手川宏基)
6名
川崎フロンターレ(大島僚太、登里享平)
5名
名古屋グランパス(菅原由勢)
ベガルタ仙台(関口訓充)
湘南ベルマーレ(斉藤未月)
4名
サガン鳥栖(高橋義希)
やはり育成組織が優秀と言われるサンフレッチェ広島、ガンバ大阪などは上位に来ています。
またセレッソ大阪、FC東京はJ3にU23チームを持っているので、その分ホームグロウンとしてカウントできる人数が多いのだと思います。
逆にホームグロウンが少ない名古屋グランパス、浦和レッズは近年外部からの補強を積極的に行っているため、川崎フロンターレ、サガン鳥栖は大卒新人を積極的に獲得しているためであると思われます。
イングランドのホームグロウン制度
イングランドのプレミアリーグでもホームグロウン制度がありますが、これは日本とは少し違う制度です。
21歳を迎えるまでに3シーズン以上、イングランドあるいはウェールズでプレーした選手(国籍は問わない)をトップチームに8人以上登録する必要があります。
これにはプレミアリーグ特有の背景があります。
プレミアリーグはEU圏内の選手を、外国籍の登録枠に含みません。
そのため、スタメン全員がイングランド人以外ということも可能であり、実際にアーセナルなどはスタメン全員が外国人ということもありました。
これを懸念したリーグ側がホームグロウン制度として、自国選手の保護に努めるようにしたのです。
導入直後に一番影響を受けたのは、外部からの積極補強をしていたマンチェスターシティ、トッテナムと言われており、逆にマンチェスターユナイテッドは元々下部組織出身の選手が多く影響を受けませんでした。
アーセナルはアーセン・ベンゲル監督が若手選手を積極的に獲得する傾向があったので、そこまで大きな影響を受けなかったようです。
まとめ
ホームグロウン制度の導入によって、日本のサッカー環境がどのように変わっていくのか注目です。
自分の応援するクラブの、どの選手がホームグロウンに当たるのかを考えるのも楽しいですね。
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