昨シーズン途中からヴィッセル神戸の監督に就任したファン・マヌエル・リージョ氏。戦術家として知られる53歳(1965.11.2生)のスペイン人監督です。
追記
欧州のビッグクラブでの指揮経験がないことから、日本では一部の海外サッカーファンしかその名前を知らない存在でした。
しかしスペインでは、スペイン代表やバルセロナが得意とするポゼッションサッカーの礎を築いた存在として有名な存在です。
日本でも就任後にマスコミが「グアルディオラ監督が師と仰ぐ存在」と書き立てたため、その采配に注目が集まっています。
リージョはグアルディオラの師?
グアルディオラ監督といえば、バルセロナの黄金時代を築き、バイエルンミュンヘン、マンチェスターシティでも数多くのタイトルを獲得している世界屈指の名将です。
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そんなグアルディオラ監督の師がリージョ監督と言われます。
グアルディオラ監督は現役最後のクラブとして、メキシコのドラドス・シナロアという無名クラブでのプレーを選びました。
その華麗なプレーからバルセロナで黄金時代を築き、セリエAでも強烈な存在感を放った「ペップ」はメキシコ行きの時点でもマンチェスターユナイテッド、マンチェスターシティ、チェルシーなどのビッグクラブから獲得オファーを受けていました。
それでも、その誘いを断って現役最後のクラブにメキシコの無名のクラブを選んだ理由が「リージョ監督」なのです。
2人の出会いはグアルディオラが選手としてバルセロナで活躍していた1996年に遡ります。
その年、リージョ監督はレアル・オビエドを率いており、その当時からポゼッションサッカーを実践し、高い評価を得ていました。
グアルディオラ監督と言えば、相手よりも圧倒的にボールを支配することで相手よりも優位に立つポゼッションサッカーの信奉者です。
そんなグアルディオラは対戦したレアル・オビエドの戦術に心酔し、その心酔ぶりはバルセロナの監督として、彼を推薦したことがあるほどです。
引退後に指導者となることを目指していたグアルディオラはリージョ監督の指導法を選手の立場で受けるために、数々のビッグオファーを断って、リージョ監督が指揮を取るメキシコのクラブに加入します。
メキシコでは練習が終わった後も何時間も残って、メモを片手にグアルディオラがリージョ監督に教えを請うていたそうです。
リージョの経歴
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リージョ監督は、早々に選手としてのキャリアを諦め、指導者への道に進んでいます。
10代にして、自分と同じ年代のアマチュア選手を率いて全国準優勝を果たし、20代にしてプロサッカークラブの監督に就任します。
グアルディオラ監督と出逢った1996年はリージョ監督はまだ29歳であり、この年齢で既にリーガエスパニョーラ1部のトップチーム監督を務めていました。
しかし、これまでのキャリアでは多くのチームを率いてきていますが、そのほとんどが短期間で辞任、もしくは解任に追い込まれています。
めぼしいタイトル獲得もなく、ビッグクラブを率いた経験もないことから、世界的な評価を得ることはできていません。
しかし、それでも数多くのオファーが舞い込むのはリージョ監督の戦術を学びたいというクラブが順番待ちになっているためと言われます。
そんなリージョ監督にとって、ヴィッセル神戸は18クラブ目の監督となります。
1981-1985 | アマロスKE | スペイン |
1985-1988 | トロサCF | スペイン |
1988-1991 | CDミランデス | スペイン |
1991-1992 | クルトゥラル・レオネサ | スペイン |
1992-1996 | UDサラマンカ | スペイン |
1996-1997 | レアル・オビエド | スペイン |
1998 | CDテネリフェ | スペイン |
2000 | レアル・サラゴサ | スペイン |
2003-2004 | シウダ・デ・ムルシア | スペイン |
2004-2005 | テッラーサFC | スペイン |
2005-2006 | ドラドス・シナロア | メキシコ |
2008-2009 | レアル・ソシエダ | スペイン |
2009-2010 | UDアルメリア | スペイン |
2014 | ミジョナリオスFC | コロンビア |
2015-2016 | チリ代表(アシスタント) | スペイン |
2016-2017 | セビージャFC(アシスタント) | スペイン |
2017 | アトレティコ・ナシオナル | コロンビア |
2018- | ヴィッセル神戸 | 日本 |
リージョの戦術
歴代のバルセロナ監督が戦術の相談をする先はヨハン・クライフか、リージョと言われるほどポゼッションサッカーに対する造形が深いと言われます。
今、世界でのスタンダードとなりつつあるポジショナルプレーを理論的に落とし込んだ初めての監督がリージョ監督です。
リージョ監督によると、ボールを保持し続けることがポジショナルプレーを指すのではなく、ポジショナルプレーを実現するためにボールを長く保持する戦術に行き着いたという方が正しいそうです。
ポジショナルプレーとは、フォーメーションに拘らず、その場、その場で全員が最適な位置にポジションを移すことで相手よりも優位に立つ概念です。
ボールポゼッションはそれを実現するための手段の1つなのです。
例えばグアルディオラ監督は選手のポジションをただのスタート位置とし、常に全員が最適な場所にいるように指示してきました。
その結果がラーム選手、アルバ選手の偽サイドバック、ノイアー選手の超攻撃的ゴールキーパーです。
ポジショナルプレーを実現するためには、全選手が全ての場面で最適なポジションを選択できるように指導することが必要です。
その点でリージョ監督の指導方法は極めて論理的であり、トレーニングでは様々なシチュエーションを用意し、選手が選ぶべきプレーの判断基準を提示していきます。
トレーニングで明確な判断基準を選手に与えることで、試合の中で無意識的に最適解を求めることができるようになると語っています。
まとめ
リージョ監督は昨シーズン途中から神戸の監督に就任していますが、これまでの経歴から短期間で結果を出すタイプではありません。
このシーズンオフから本格的な指導が始まると思われますが、万が一結果が出なかったときにどこまで我慢できるのかがポイントになります。
Jリーグでは昨シーズン、マリノスがポゼッションサッカーに挑戦し、かなり波のあるシーズンを過ごしました。
それだけポゼッションサッカーの実践が難しいということです。
イニエスタ選手やビジャ選手はバルセロナでの経験があるため問題ないと思いますが、他の選手たちがリージョ監督の指導に付いてこられるかが神戸躍進の鍵となるのではないでしょうか。
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