2018シーズンはJ1残留争いに巻き込まれ、辛くも残留を果たした横浜Fマリノス。
これまでの堅守とは異なり、攻撃に比重を置いた超攻撃的スタイルとなり、その変貌ぶりは大きく注目されました。
2018シーズン、新たに招聘した新監督のもと、マリノスは大改革に着手したのです。
- マリノスがなぜ大改革を断行しなければいけなかったのか。
- そのキーマンとなるポスコグルー監督とは何者なのか。
- その超攻撃的戦術の注目すべきポイントは何なのか。
- その効果は現れたのか、それとも失敗に終わったのか。
今回は、新生横浜Fマリノスについてまとめてみました。
マリノスが大改革(モデルチェンジ)を決意した理由とは
マリノスが今季、大きく戦い方を変えたのには理由が2つあると言われます。
1つは成績面、もう1つは興行面です。
成績面
マリノスと言えば、これまで堅守が代名詞でした。
しかし確かに失点が少ないチームでしたが、2013年に2位という成績を収めた以外は長らく中位に低迷しており、失点はしないが、得点も少ないため勝ちきれない試合が多いという状況を脱却できていませんでした。
中村俊輔という屈指のタレントを擁していても、この状況は変わらなかったことから優勝を目指すためには選手ではなく、チームスタイルそのものを変える必要性に迫られていました。
興行面
マリノスの試合は他のサポーターからは「塩試合」と揶揄されてきました。
「塩試合」とはお互いに長所を消し合うサッカーをし、得点も失点もないサッカーのことを指します。
長年マリノスを応援してきているサポーターからすれば、堅守はマリノスが誇るべきポイントですが、一見さんからするとサッカーで最も盛り上がる得点シーンが少ないため、リピーターになりづらいという面がありました。
よく言えば玄人好み、悪く言えばつまらない試合なのです。
新規サポーターを取り込むためには、ゴールが多く生まれる試合、つまりより攻撃的なスタイルが必要となったのです。
ポステコグルー新監督の戦術のポイント
そんな状況を脱する為に、マリノスは業務提携しているシティフットボールグループとの繋がりを活用し、オーストラリア代表監督であったアンジェ・ポステコグルーを新監督として招聘します。
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ポステコグルー監督はポゼッションサッカーの指導に定評があり、マンチェスターシティのグアルディオラ監督に似た戦術を志向する監督と言われます。
彼の戦術で特徴的であったのはサイドバックとゴールキーパーの位置取りです。
ハイラインを維持するためのゴールキーパーのポジション取りはシーズン当初たびたび話題になりましたが、シーズン終盤は定位置に戻っています。
逆に変わらずに貫いたのが、サイドバックのポジションであったため、ここではサイドバックについてフォーカスします。
生命線であるサイドバック
今シーズンは左右のサイドバックのレギュラーであった山中亮輔と松原健がピッチ中央の位置でパス交換する姿をよく目にしました。
従来であれば、そこはボランチの定位置であり、サイドバックが中央で攻撃の組み立てに参加するのは、これまでのマリノスでは見られなかったことです。
このサイドバックがセンターに極端に絞るという動きは、マンチェスターシティと同じ戦術ですが、その重要性は彼らがサイドバック獲得に投じた金額が、他のどのポジションよりも高額であったことから伺えます。
サイドバックが中央に絞ることの主なメリット、デメリットについては以下となります。
メリット
- 中央に人数を多く掛けることができるため、ボールを前線に運ぶ際に数的優位を作ることができる。
- サイドバックが中央に寄ることで、相手ディフェンダーも中央に釣られるため、両サイドでウイングと相手サイドバックの1対1の状況を作ることができる。
- サイドからのクロスに対して、サイドバックもゴール近くに攻め上がるため、ゴール前に多くのターゲットを作ることができる。
デメリット
- 組み立て時に不用意にボールを奪われると、サイドに広大なスペースが広がっているため、すぐにゴール前までボールを運ばれる
- スペースを消すためにハイラインを維持する必要があるため、センターバックの後ろに広大なスペースができる。
メリットについては、今シーズン1試合におけるゴール数がリーグ2位(昨年8位)、ボール支配率がリーグ1位(昨年9位)であったことからゴール、支配率の2つで目に見える成果を出していたことが伺えます。
デメリットについては、失点数が16位(昨年5位)であったことから、最後まで課題として残ったと言えます。
来季のポイント
今季の超攻撃的なスタイルへのモデルチェンジにより、多くのゴールが生まれるエキサイティングな試合が増えましたが、結果は残留争いと成績は伴いませんでした。
観客動員も2017シーズンが平均24,766人であったのに対し、今シーズンは21,788人と数を減らしています。
日産スタジアムが改修のために使えなかった期間があることも考慮として入れるべきですが、昨年と比べて数を減らしていることは事実です。
この2つのことから、モデルチェンジの1年目は失敗と言えるシーズンに終わりますが、2年目は全ての面で1年目を上回ることを求められます。
来シーズンは、いかに攻撃を今年の水準で維持したまま、失点を減らせるかに掛かってくると思います。
生命線のサイドバックについては、今季のレギュラー2人(山中、松原)の控えがおらず、どちらかが欠場すると大きく試合のクオリティが下がるという弱点がありました。
来シーズンは2人のサブをこなせる選手の獲得が必須であり、そのことを裏付けるようにシーズン終了直後に徳島からサイドバックの広瀬選手を獲得しています。
甲府に期限付き移籍をしていた高野選手の復帰も確実と言われており、これで今季苦しめられたサイドバックのバックアッパーについて一定の目処が立ちました。
広大なスペースを管理するセンターバックについては、シーズン途中にドゥシャン、チアゴ、畠中の3選手を獲得しており、これ以上の獲得はないと思われます。
シーズン途中の加入であったため、3人ともに連携面に課題を残しましたが、来シーズン開幕時には改善していることを期待できます。
なお、今季のマリノスは誰か一人が突出してゴールという結果を残していたわけではなく、誰が出ても同じ形で得点を奪えていたことが挙げられます。
今シーズンのトップ5
これはマリノスが攻撃面で長年の課題としていた個に頼る攻撃からの脱却と言えます。
来シーズンはウーゴ選手と伊藤選手の移籍が確実視されていますが、このポジションはそこまで大きく心配することはないと考えています。
12/27追記:李忠成獲得
来シーズンは課題であったディフェンス面が改善し、さらに攻撃面も今シーズンの質を維持できるのであれば、優勝争いに絡んでいけるのではないでしょうか。
【ポステコグルー監督が攻撃的サッカーを目指す理由】(横浜Fマリノス公式)
まとめ
改革には痛みが伴います。新体制1年目の2018年は超攻撃的スタイルを貫いたことから、失点の多さが目立ちました。一方で、得点力は向上し観戦する側としては面白くなってきました。
1年目うまくいかなかったことを見直し来季につなげれば、横浜Fマリノスは大化けする可能性は十分にあると思います。
2019シーズン、マリノスに注目してみてください!
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